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第三章「廃屋」 26
だが、今はそんな事はどうでもいい。前へ進むことが先決だ。
ロバートは掌に突き刺さったガラス片を、ウージーの引き金を絞るのに差し支えない、最小限の数を抜くとすぐに走った。傷口からは肉が血塗れの掌の皮膚から覗いており、そこから滴る血液が彼が走った軌道通りに床に一本道を作っていく。
「大丈夫ですか、止血しなくて?」
「あぁ、大丈夫さ。ガキの頃のスラムで慣れた」走りながらミシェルとロバートが喋る。遙か前方に見えるエレーベータの脇の扉が地下駐車場へと続く階段の入り口だった。あと25メートルといったところか。5秒もあれば行き着ける。
すると、通路の脇の靴販売店からまたしてもノーアイズが現れた。しかし、そいつらを相手にする気など全く無かった4人はそれを無視して走り続ける。マックスが後ろを振り返ると、先程出てきたノーアイズとは早くも10メートルの距離が出来ていた。
残り15メートル。あと数秒でゴールだ。皆、全力で扉へと駆ける。