第三章「廃屋」 24
その爆炎の正体はアッシュの改造グレネードだった。不気味な白い艶を持ったノーアイズの肉片と一緒に鮮やかな金属光沢を持ったエスカレータの金属片が飛び散る。足元からエスカレータが南極の氷壁のように崩れる感触が伝わった。黒煙が目の前の暗闇を駆け抜けて突き刺すような匂いで4人の鼻孔を刺激した。
しかしその轟音のせいか、多数の小さな黒い影が声を上げながら崩懐するエスカレータの下に集まってきた。ブルだった。ギャインギャインと吠えたてながら、縄張りを荒らされた怒りを露わにしながら突っ走ってきた。目の前の黒煙が消え去るとグレネードに抉られたエスカレータの全貌と喚くそいつらの姿が一斉に視界に現れた。
しかし、そのブル達の鳴き声は一瞬にしてウージーの金切り声によって掻き消された。
「邪魔だ、腐ったチワワ共めが!」ロバートは叫びながらウージーの引き金を引き絞って崩落したエスカレータの方へと前進した。
まず1匹のブルに7発の9ミリ弾が襲いかかった。始めに最初の3発が前脚、横腹、頭部へとぶち込まれ、ブルの命を絶った。だが、それだけでは収まらず、残りの4発がまるで解体ショーを悦しむかの様に腹へと命中した。