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第三章「廃屋」 20
「さて、ここらで休憩としますか。」ミシェルがそう言って座ったのは、2階のエスカレータ近くのベンチだった。しかしもちろん、そのベンチにも埃が被っていたので、多少潔癖のあるミシェルは座る前にそれを念入りに払い除けた。
目当ての物は見つかった。地図だ。2階の方にはあるべき場所にちゃんとあったのだ。今思えば一階の件はとんだ不運だった。
地図によると、この建物は12階まであるらしく、夜の屋上からはボストンの摩天楼が堪能できると書いていた(それは遠い昔話で現在は四六時中灰暗い地獄しか見られなくなったのだろうが。そして今はそんなことはどうでもいい)。
1階には合計3つの出入口があった。が同時に、極力これらを避けなければならない事が明白となった。なんと、それら3つの出入口、違う方角にあるにも関わらず全てがレイが死んだ死の街道の近くに位置していたのだ。
外に出た途端に、中断したパレードの続きを押しつけられるのは本当に洒落にならない。