第三章「廃屋」 19
「おい、キザ!?」ロバートの制止も効かない。ミシェルはただ黙々と死体から内臓を抜き取っては自分の横に陳列し続ける。ミシェルのコートは血の洗濯機で洗ったみたいに返り血でずぶ濡れになっており、体内に突っ込ませていた腕の見た目はそこらに転がっている肉塊と大差なかった。
彼は狂ってしまったのか。
いや、違う。
彼は狂ってなんかいない。
マックスは閃いた。
「ミシェル。」案の定、返事は来なかったが、マックスは続けた。「お腹空いてるけどミートスパゲッティは要らないよ。」
すると、ミシェルは手を止めた。と同時にマックスの方に振り返った。
「バレましたか。」残念そうにミシェルは呟いた。「まぁ冗談でやりましたが。」
「おい、クソキザ。」とロバート。「これが冗談のつもりか?」
「ボブ曰くアメリカンジョークですが。」
「これのどこがジョークなんだ馬鹿。お前ネジがどっかにトんでんじゃないか?お前のはアメリカンジョークじゃなくてエイリアンジョークだ。」
すると、マックスに肩を借りている瀕死のアッシュが吹き出した。そして声高らかに笑った。
アッシュの笑顔を見るのはこれで最後となった。