第三章「廃屋」 18
すると、ノーアイズが自らの鼓膜を裂くかと思う勢いで喚き立てた。体内に腕が入ってくる…絶叫必至の激痛が体全体を駆け巡った。この痛みに耐えようと、歪に変形した長い爪で床を引っ掻き回した。しかし、その爪はすぐに剥がれ落ちた。爪と爪との間の肉が一瞬垣間見えた途端、べりり、と嫌な音を立てて爪が根こそぎ取れたのだ。その露出した肉から、大粒の血液が溢れだした。指からこぼれたドス黒い血が床に水玉模様を描く。
ミシェルはその時、腸を掴んでいた。握力で圧迫する度にノーアイズが喘ぎまくるのだった。面白い玩具だ。
次の瞬間、ミシェルは渾身の力を入れて掴んでいたそれを一気に引き抜いた。半分しかないノーアイズの体が反り返った。腸が腎臓やら肝臓やらと一緒に体内から体外へひっこ抜かれた。そこから大量の血と腐臭が勢い良く噴き出した。ノーアイズは一度大絶叫し、爪の剥がれた手を意味なく左右に何度か揺らした後、事切れた。引き出されていく腸はまるで消火ホースのようだった。細く長い筒の先端から出てくるのだ。垂れた糞便が。ノーアイズはもう指先をピクリとも動かしていない。
しかしミシェルはそれでも尚、革袋を作るかのように死体から内蔵を引きずり出す