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第三章「廃屋」 17
「Great.」雷のような銃声が鳴り止むと、代わりに手を叩く音が響いた。ミシェルの拍手の音だった。彼の眼下には、粘り気のある血糊のまどろみの中でばたつく、下半身を失った、一体のノーアイズがいた。この血の海の中で動くものといえば、もうこれしかいなかった。ぎゃあぎゃあと赤ん坊のように呻き声を上げながら、細く青白い二本の腕を意味もなく振り回していた。
「もうこいつで最後だ。さっさと終わりにするぞ」ロバートがそれに銃口を向けた。「俺も早く休憩したいんだよな、腹も空いてきたし」
すると突然、ミシェルは思いついたような素振りを見せてから、足元で蠢くそれの頭部を思い切り踏みつけた。靴底からそれの頭蓋骨が割れる感触が伝わった。
「おい、何やってんだ?」ロバートが聞くも、ミシェルは何も答えなかった。
ミシェルは次に踏みつけた足をそのままにしてノーアイズの動きを封じ、そいつの千切れた断面に手を突っ込んだ。その瞬間、ノーアイズの体が一瞬、びくんと痙攣を起こした。
するとミシェルは突っ込んだ手でそれの腑の中を掻き回し始めた。