第三章「廃屋」 12
よく見ると、段の滑り止めの隙間に、小さな肉片が幾つもこびり付いていた。そのせいで、足元に少しぬめりがあった。だが、4人の内、誰もこの原因を考えようとはしなかった。
カツリ、カツリと物悲しい音を立てながら登っていくと、やがてエスカレータの半分の所に至った。
すると突然、強烈な唸り声が1階の方から聞こえてきた。それは明らかに人間のものとは思えない、狂った叫び声だった。ノーアイズだ。
数匹のノーアイズが、割れ響くような奇声を発しながら、1階からエスカレータに走り寄ってきた。
「野郎、登ってくるつもりか…!?」すぐさまロバートがウージーの照準をそれに定めた。「ぶっ殺してやる!!」
しかし、「落ち着いて下さい」ミシェルが制止に入った。
「何だよ!!登って来ちまうだろうが!!」
「まず登るのが先です。貴方も的が1方向にまとまった方が撃ち易いでしょう?」
するとロバートは一呼吸置いてから、ああわかったよ、とミシェルの得意顔が少し気に入らなかったが、そう言った。「エスコート頼むぜ、キザ!!」
「糞が無くなりましたか、良かったです!!」ミシェルはそう叫んで、2階目指して突っ走り始めた。
だが、甘かった。