第三章「廃屋」 11
「こんままじゃさっきの連中に喰われちまうぞ!!」ロバートは更に檄を入れる。額の真ん中で血管が脈を打っている。「これからどうすんだ!?地獄のモーテルをブギーマンにさんざ追われんのか!?冗談も…」
「貴方馬鹿ですか。」ミシェルは檄を途中で断ち切った。「1階に無ければ2階に行けばいいじゃないですか。」その口調はまるでマリー・アントワネットを模しているかの様だった。
「ああ、成るほど」とマックスが相づちを打つ。「チミが馬鹿なのが良く解りました」
すると、この小僧、と言うにも言えなくなってしまったロバートは、一旦雲脂が溜まった頭を掻きむしってから「そうかい。」と素っ気なく答えた(彼にとって珍しい譲歩行為だった)。
そしてミシェルは首の骨を2回左右に鳴らした後、「さて、行きましょうか」と言いながら、止まってしまい、ただの階段と変わらなくなってしまったエスカレータの段を一つ踏みしめた。
段を次々に登っていくミシェルを追っかけて3人も行く。
段の途中で1階のフロア全体を見渡せるようになっていた。
やはり、店内にもノーアイズ達は不気味に身を震わせて蠢いていた。これが蠢く様は2ヶ月経った今でも慣れることはない。