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第三章「廃屋」 8
ーーこれが、アッシュの傷だった。息絶え絶えになって、ミシェルを見つめる。
「…分かりました。休みを取りましょうか。」すると、ミシェルは近くに衣料品コーナーを見つけた。
「…ありがとうございます」アッシュは礼を言うと、衣料品コーナーの中に入っていくミシェルの後を追いかけた。
先程から衣料品コーナーとうたってはいるが、まともな衣料品は見渡す限りでは皆無だった。商品のザマは皆、千切れているか得体の知れない液体に侵されているかだった。さらに、床に散乱しているセーターは糸屑同然のゴミと言える程にズタズタにされていた。
「あっ、あれ…見て」マックスが何か見つけたようだった。指をコンクリートむき出しの柱に向けて震わせている。3人はその先を注視した。
「な…何だありゃあ…!?」その瞬間、ロバートが絶句した。その光景にはミシェルまでもが驚きを隠せなかった。
その光景とは、1体のノーアイズの惨殺死体だった。柱の根本に横たわっていたその死体には大きな致命傷跡が残っていた。
だが、ただの惨殺死体ならマックスは無視して通り過ぎていたに違いなかった。