第二章「腐食」 2
「旨いなぁ。」バターが利いたクッキーは甘かった。
ノーアイズが猛威を振るうこの世界の中での人間は本来は糞のような食材しか手に入れられず、それからできる糞のような食事しか食べられないのだが、ミシェルはその糞のような食材から旨い料理を作り出せる。
しかし1回、彼はノーアイズの屍肉を食材に使おうとし、「『死霊のはらわた』の次期主人公だな」とボブから罵られた。今でも根に持っているらしい。
「おー痛ぇ…。」ロバートが靴を脱ぐと、足の裏に大きな血豆が出来ていた。これまででレジスタンスは数百キロを歩いてきた。ロバートに限らず、メンバー全員、血豆やらアザやらが足の裏に出来ている。
雪が止んだ。だが、辺りは一層の冷え込みを見せる。
「寒いか?」ジョンは震えるジャニスの背に毛布を羽織らせた。
するとジャニスは「ん…ありがと」ジョンに寄り添い、その腕を抱き寄せた。
しかしそれを見て、ジョン達の脇にいたボブは気分を悪くしたようだ。ぼそぼそ愚痴をこぼし始めた。「なんだってんだあの女、俺らに対しては虎になんのに、リーダーの横にくっついた途端、猫になりやがる。一体何の突然変異だ?それに…」
「聞こえてるぞ。」