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第二章「腐食」 1
それから4時間ほど歩いて、ボストンの都市部に出ると、そこの酷すぎる殺風景が一同を愕然とさせた。
立ち並ぶビルの窓ガラスの破片が幅の広い道路一体に容赦なく散りばめられている。
そして何故だろう、景色が歪んで見える。空気が淀んでいる。
「とんでもない所に来たもんだな…」ジョンの言う通りの街並み。かつての観光名所の陰を微塵も漂わせない崩壊ぶりだった。
2脚の鉄製ベンチがあった。4時間も歩き、足が疲れたので休憩を挟むことにした。
まずレイが座ると、パリパリとペンキが剥がれ落ち、尻に軽く付着した。が、皆気にせず横に座っていった。他に人間がいなくなってしまったここでは人目を気にすることは全く無駄な行為であるからだ。ペンキが付着するなどどうでもいい。あとで払えば済む話だ。
すると、マックスがポケットから非常食のクッキーの袋を出し、開けた。周囲にほのかに甘い香りが漂った。ミシェルが一昨日作ったものだった。