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第一章「月光」 20
「おっ、やっぱりな。」ジョンが視線を移すと、そこには破壊された店の自動ドアから出てくるマックスとボブの姿があった。
「ただいま。」
「遅い。」
するとジョンとマックスの間にロバートがずかずかと入った。「おい、テメェ。せっかくの賭けが台無しじゃねぇかよ、アホンダラ。」ロバートは肩を落として言った。マックスの頭を軽くはたいた。
その時「ちょっと待てロバート。」とボブ。「お前さっき『賭け』って言わなかったか?」褐色の額の眉間に皺が寄る。
「ああ。賭けてたよ。手前が戻ってくるかこないかで。」
「…ははは。絶対賭けにならんかっただろ。俺はボブ・コーフィ様だぜ?」視線をジョンの方へ移した。
「俺は帰ってくる、に賭けてたよ。」そしてジョンは申し訳ないという様な顔をして付け加えた。「賭けはマックスが行っちまったから無しになった。だが、その前はきっちり成立したんだよ。」そう言ってミシェルを指さした。
「へっ、クソキザ野郎。」
「貴方もその呼び名ですか、黒達磨。」無論、黒達磨というのはスキンヘッドのボブの事だった。