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第一章「月光」 19
「ぅわあああぁあぁぁっ!!」突然の恐怖でショットガンを床に落としてしまったボブは悲鳴を上げて屈み、目をつむってしまった。ブルが超至近距離で襲いかかる。
諦めが、暗闇の中死へのカウントダウンを始めた。
ああ、もうすぐで俺の頭に犬っころの牙が食い込んでくる!
もうすぐ腕が足が喰いちぎられちまう!
もうすぐエサになっちまう!
嫌だ!
死にたくない!
神様!
助けて神様!
もうすぐ…!
もうすぐ…?
何故だ。5秒経った。いつまで経ってもどこも喰いちぎられない。五体満足だ。
重い瞼を上げ、ボブの視界に映ったのは、
2匹の死体と1人の男だった。
マックスだった。見ると手に持つグロックが煙を微かに上げていた。
「どうしてお前も…?」
「面白そうな事には首突っ込みたくなるんだよ。立てる?」マックスはそう言って屈んだボブに手を差し伸べた。