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第一章「月光」 13
その直後、不意に先程の生き残りのブルがボブに背後から襲いかかってきた。余りに不意だった。振り向いて銃を構えた途端、鋭い牙で噛み付かれた。
「……!」しかし、噛み付いたのはボブの体ではなく、ショットガンだった。ボブがショットガンを持った腕を持ち上げると、ブルの脚は地面から離れ、もがきだした。ショットガンから牙を離そうとしない。
「…コレどうすりゃいい?」ボブは呟くと、横にいたマックスが
「一発かましちゃえ。」そう言ってグロック19 9ミリの銃口をブルの頭部に当てた。装填数15発、600グラムの高性能銃。
「お前は信用ならないんだが…。」とボブ。ブルがより一層ばたつく。
「銃揺らさないでねー。」マックスは引き金に指を掛け一気に引こうとした、その瞬間。
ブルの激しくばたついていた右脚が、ボブの肥満気味の腹のみぞおちに直撃した。
「かはぁッ!!?」ボブは痛みと驚きでショットガンから手を離してしまった。
マックスが放った銃弾が空を切る。
そして地面にきれいに着地したブルはショットガンをくわえたまま逃げるように走り出した。