第一章「月光」 9
この犬はヤバい!
そう直感した直後、ジョンはコルトパイソンを抜き、横切り様にその犬を撃った。弾が命中した頭部はその瞬間、破裂したように黒い血液と脳味噌をまき散らし、胴は国道のコンクリートの上に崩れ落ちた。
これで一同の目の前に出来上がった死体は、普通の犬のものではないことが頭部が原型をとどめていなくてもすぐにわかる事となった。懐中電灯の光がようやくまともに当たるからだ。そして、ジョンが見た犬の異常な姿は気のせいではなかったことが判明される…。
犬の体表には毛はいっさい無く、代わりに粘膜質の白い体皮が懐中電灯に照らされて不気味に光っている。みるみる広がっていく血溜まりも黒だ。
「やっぱりノーアイズ…?だったね…。」レイは戻ってきて死体に近づくと、おそるおそる足で死体を小突いた。
「ああ…。」ジョンはコルトパイソンのシリンダーに弾を詰め直し始め、少し間を空けてから言葉を続けた。
「唐突だが、囲まれたみたいだ…!」
「…?!」皆騒然として辺りを見回す。すると、全方位の車の上で先程と同じ様な犬が数十匹、唸りを立ててこちらを睨んでいるではないか。