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第七章「煉獄」 11
「ク……ソ、早く…地下で治療を……!」千鳥足で部屋の扉へ向かうミシェル。彼は左腕を失った事による大量出血で意識が朦朧としていた。目が霞む、耳が遠のく。体が、自分でも解る程に冷たくなっていく。
倒れたノーアイズに一瞥する。全く、ピクリとも動かなかった。
向き直り、また歩く。
地下にはミシェルが指揮る研究員達の研究室がある。そこに行けば、治療が受けられる……。
次の瞬間。
二体目のノーアイズが部屋の扉を破り、ミシェルの両の眼窪を喰い千切った。
「ぎゃあぁあぁぁあぁぁ!!」
ミシェルが大きくたじろぎ、痛みに悶える。顔面から鮮血が止めどなく溢れる。眼球を奪われた彼の視界は、一瞬で闇に閉ざされた。
悶えていると、今度は首筋の方に酷い痛みが走った。大絶叫した。触ると、首の半分が抉り取られていた。今、直に指先で己の脊椎に触った事に彼は戦慄した。
首が意図せずとも、段々と横に傾げていく。頬と肩に伝わる粘った感覚で、ノーアイズが自分の首をへし曲げようとしているのが容易に推測できた。