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第七章「煉獄」 10
ノーアイズがよろめきながら後退した。ミシェルに鳩尾を撃ち抜かれたのだ。どてっ腹から溢れる黒い血が、床で斑点を描く。
そう、ミシェルは左腕をもがれる刹那、シグナル解除に成功したのだ。
よって、ノーアイズの体は通常通りの肉質、速度に戻った。
低い唸り声が轟いた。断末魔だろうか。
同時にミシェルも叫んだ。
ーー私が作った物に殺されてたまるか!!
ノーアイズの体にありったけの弾丸がぶち込まれていく。
脇腹が抉れ、腕の筋肉が千切られ、太股の肉が破砕され、肺を貫かれた。
漆黒の血の霧が飛散し、ノーアイズの体躯がミシェルの前に崩れ落ちた。銃創から流れ出た腸が血の海の中に沈んでいった。
銃声の響きが止んだ後、聞こえたのはノーアイズの虫の息、虚空に酸素をせがむ音だ。