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第0章「衰退」 19
海老反りになって五月蠅いサイレンを響かせる。
宥め、正気を取り戻させようと皆必死になった。しかし、遅かった。
次の瞬間にサムの弾丸に頭を抉られて死んでしまったのだ。
「喚くな、愚図。」サムの瞳は狂気に満ち満ちていた。「目の前の敵に集中しろ、糞馬鹿め。」
そう言うと、再び押し寄せて来るノーアイズを撃ち始めた。まるで、ただ一人が戦っているように。ただ一人で闘っているように。仲間の事に振り返りもせず、黙々と殺し続けている。
団員の事はどうでもいいように。
……この時、皆は確信した。
ーー我らの指揮者、サム神父は目的を見失っている。そして、死んでいる。彼は死んでいる、と。彼の頭はもはや血で埋められ、殺戮の事のみしか考えられないようになってしまっている、と。人間として死んでいる、と。人であるが人ではない、人非人である、と。
全てを悟ってしまったのだ。