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第0章「衰退」 10
血溜まりでひくつくブルの死骸。それを横目に新たなブルが一体、また一体と次々と暗闇から姿を現した。大きく口を開き、腐った歯茎を見せながら、それらは吠えた。鼓膜をつんざく耳障りな音が辺り一帯に響いた。
「何をしているんだ、愚図共。早くあの狂犬達を撃ち殺せ。」
サムの令が聞こえたが、誰もすぐには撃たなかった。ブルを殺すか、サム神父を殺すかと葛藤したのだった。だが、すんでの処で思いとどまり、ブルの方に銃口を向けた。
「おい、早くしろ、殺すぞ」
サムが瞳孔を開き、大きく息を吸い込んだ所で、集中砲火が始まった。たちまち大きな硝煙が立ち昇り、その弾幕は現れた来たブル達に一斉に襲いかかった。
響き渡る銃声に、肉体を肉片に変える湿潤な音が絡みついてくる。硝煙の霞にブルの四肢や頭部が千切れて飛んで行くのが幾つも見えた。ぶち撒かれていく臓器が陰惨な悪臭を生んでいく。