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第0章「衰退」 9
車の群れの陰で蠢く影を見て、サムは止まったのだった。そこで彼が浮かべた笑みは猟奇的な、狂った笑みだった。死体の断片で作った衣服に身を包んだエド・ゲインを彷彿とさせた。
「あぁ、死体がこちらへやって来る。俺たちを地獄へ誘いにやって来るぞ……」サムが頬肉を不自然に歪ませると、蠢いていた影の内の一つが車の陰から姿を現した。
醜く歪んだ肢体と、重油を思わせるどす黒い唾液を滴らせる紫の舌をぶら下げて、ブルがのそりのそりと鈍重な足取りでこちらに近づいて来た。
「見てみろ、愚図共。あの哀れな犬を。」皆がその言葉を聞いて接近してくるブルに注目を始めると、サムは続けた。「あれは、犬として死ぬ刹那、こう願っただろう。あぁ早く神の元へ、と。だがその祈りは今や誰にも叶わない夢となってしまった」サムの独り語りの最中、ブルの頭が穴だらけの肉塊と化していく。それが完全に力を失い、地に崩れ落ちるとサムはまた続けた。
「だから、死に損ないを見つけたら速やかにぶち殺せ。それが道理だ。」