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第0章「衰退」 8
レコンキスタは南へと往く。目的地はニューヨーク、コア・ビルだ。
歩いていくと、冷たい風がスミスの頬を撫でた。
そう言えばもうすぐクリスマスだな……。
雪が降ってきた。皆が空を見上げる。混沌の闇の空に似合わない、綺麗な雪だった。時々立ち止まりそれを見ては、一年前に戻りたい、と誰しもが思った。唯一人、サムを除いては。
「……何過去を懐かしんでいるんだ?過去より今だ。今。グズグズしてると撃ち殺すぞのろま共。」
背筋が凍るような虫酸が走った。が、皆、物一つ、一切何も言わない。ただ、前を向き直り、歩き始める。その中には喉から出そうになった「死ね」という言葉を必死に押し込む者も居た。
「そう……それでいいんだ。愚図は愚図らしく俺の言う事を聞いていればいいんだ」雪の降る中、何も感じることなくサムは歩いた。
そして、止まった。
「死に損ないか来るぞ。構えろ、ボンクラ共」