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第0章「衰退」 7
「俺達は昔っからの親友だ。ほら、餓鬼の時よく一緒に店から盗んでたじゃないか。その飴玉を。」
頬張ると林檎の甘い芳香が舌を包む優しい味わい。子供の頃、スミスとバースはその飴玉が大好きだった。だが、二人ともかなり貧窮していた。貧乏な母の手一つで育てられたため好きな物など何一つ買って貰えなかった。自分の好きな物は盗みでしか手に入れられなかったのだ。そして、何の因果か、この二人は出会ったのだ。スーパーの菓子売場の前で。
「あの頃はよかった。お前と一緒に口の中で飴玉転がして川なんかで遊んでさ……」
「あぁ……。あの頃は楽しかったな……。今は地獄だ。」過去を懐かしむスミス。あの時の夢は今やどこか遠くの世界に飛んで行ってしまった……。
「それ、あったんだ。怪物パーティが始まる前日にな。あの店で。余りに懐かしくなったもので買ってみたんだ。まぁ、それは記念みたいなものだ。取っておいてくれ。」バースは一瞬肩をすくめると「まぁ、もう俺達の口には合わないみたいだがな」と、苦笑した。