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第0章「衰弱」 6
「さあ、行くか。せいぜい死なんようについてこい」サムは正面に向き直ると、沈黙の中、骸を踏み越えながら歩き出した。
「あぁ、糞。」スミスは誰にも聞こえぬような小さな声で呟いた。そして集団が動き出すのに合わせて歩を進めた。「これじゃあどっちも地獄と変わらない」
「そうだな。」
スミスがぎょっとして振り向くと、友、バースがそこにいた。誰にも聞こえないように言ったつもりだったのに、こいつは本当に耳がいい。
「ノーアイズと神父……今ではどちらも化け物と同義さ」バースがおどけた調子でそう囁くと、手に持っていたある物をスミスに投げ寄越した。
あまりに急な出来事に少々たじろいだスミスだったが、辛うじて、投げ寄越されたそれを掴む事ができた。
「何だこれ……。」バースから貰ったもの……それは少し大きめの紅い飴玉だった。