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第0章「衰弱」 5
銃撃においても、格闘においても、彼は他を寄せ付けない圧倒的な強さを誇っていた。
ただ一人でノーアイズの群れに突っ込んでも生きて帰ってこれるだろう。
彼の強さを目の当たりにした信者は、誰も彼もが寄生虫のように彼についていくようになった。
そうしてレコンキスタは作られたのだ。
だが、彼は頭の方は腐っていた。
自身の強さの余り、殺しに悦を感じるようになってしまったのだ。
レコンキスタ。結成当時は相当に統率が取れていた部隊だったが、日を連ねる毎に段々と頭領サムの凶悪な人間本能が目覚めていき、部隊がただの烏合の衆へと変わっていったのだった。
彼から離れよう、そう皆が考えた時にはもう遅かった。その時既に彼は冷酷な殺人鬼と化してしまっていたのだった。