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第0章「衰弱」 3
サムの持っていたRPGが煙を上げていた。
「俺の命令は絶対だ。背く奴は神の冒涜とみなし即座に撃つ。貴様らはどうする?今すぐここで俺にに撃ち殺されるか、億千分の一の奇跡を信じて助けを待つか」彼はそう言って老人達に問うた。
老人達は皆歯ぎしりし、拳を震わせ、眉間に血管を浮き上がらせて彼を睨んだ。が、逆らう事は決してできない。
サムはキリスト教の神父だからだ。
つまりこの老人達を含め、レコンキスタの隊員は全員彼の信者なのだ。
よって、皆、彼に逆らえない。
「これでは埒が開かない。三つ数えるうちに散れ。さもなくば全員撃ち殺す。」サムはまだ微かに煙を立ち昇らせているBARを構えた。その銃口はしっかりと老人達の方を向いている。人差し指の先を引き金に掛けると、彼の喉仏は動いた。「ひとつ。」
老人達は判っていた。彼が味方を容赦なく撃つ残忍な男だという事を。
彼らはサムの言葉を聞くと、皆散り散りになって逃げ出した。無言の悲鳴を上げながら。逃げ去っていく彼らの背中が悲哀と憎悪の念を語っていた。