第0章「衰弱」 2
「お前等、邪魔だ。」
レコンキスタの頭領サムは冷酷な人間であった。仲間の死を厭わない男であった。危機に陥ったときには部下を捨て駒の様に扱った。特に足手まといの人間を捨てる時には決まってその言葉を吐く。今回の犠牲者は十数人の老人達だった。
「な…何ですと…?!」老人達はその一言で自分達がどういう危機に瀕しているのか分かった。
「歩くのは遅い、銃もロクに撃てない。そんな人間がこのレコンキスタに要るか?」サムの体格は筋骨隆々といった感じで、その胸板と彼の冷徹な眼差しで老人達は一瞬、たじろいだ。
だが、すぐに反抗した。彼らにとっては死刑宣告のようなものだからだ。廃都と化した化け物の町、ボストン。撤回させないと確実にこの地で骨を埋めることになってしまう。化け物だらけの町でたった十数人の老人が一週間も生きられようか、いや生きられまい。彼らは生きたかった。
「「「私達一同は皆一生懸命に戦いますので、どうか今一度、捨てるなんて」」」
「黙れ。」老人達のかすれた声の群の中、サムの冷酷な声がひとつ響いた。
と思うと、サムから最寄りの一人の老人が血飛沫を撒き散らして崩れ落ちた。