第七章「煉獄」 5
続いて来たノーアイズの顔面に右ストレート。今度は首ごと捩じ切れた。
三体目。今度は蹴った。蹴った足がノーアイズのはらわたを貫通し、それは喀血して息絶えた。が、その死体が足先から抜けなくなった。足の甲が脊髄に引っかかってしまった。
その内に最後の四体目が、ジョンの顔面を掴んだ。そして彼の首を強引に捩じ切ろうとし、力を込めた。
しかし、その首は微々たりとも動かない。ジョンの首はまるで溶接された鋼鉄の様に頭部を支えていた。
ジョンは一心不乱にその腕を肩から捥ぎ取ると、そのノーアイズの横腹を思い切り薙いだ。胃やら腸やらといった艶めかしい臓物達が花火のように弾け飛んだ。
その様を見て終えたジョンは半ば強引に足を死体から引き抜いた。
一瞬だった。ノーアイズ四体が一瞬で肉塊と化した。
何だこれは?何だこの力は……?
ジョンは血に塗れた己の拳を眺めた。少し叩いただけでいとも簡単に死んでいく。やろうと思えば爆殺できた。恐ろしい力を持ってしまった……。
ジョンは懐中電灯を持っていなかった事に気がついた。それと同時に自分は惨烈なほ程に夜目が利くようになってしまった事を悟った。
本当に怪物となってしまった……。
空を仰視して叫んだ。だが、狂ってしまった喉仏の所為でその叫びは猛々しい咆哮に変わってしまった。