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第七章「煉獄」 1
腐敗したタイムズスクエアのど真ん中で、ジョンは立っていた。
足元にはミシェルの残骸が散らばっており、その頭部はごろりと転がっていた。
どうやら自分がミシェルの頭を引き抜いたらしい。
そう自覚したのは彼が自分の身体の惨状を目の当たりにしてからだった。
何故だ、何故俺の腕が白くなっている?まるでノーアイズの……いや、ノーアイズそのものだ。
俺は死んだのか?
いや、生きている。ちゃんと自我の意識が判るし、手足が動く感覚もある。それに胸が鼓動を打っている。俺は生きている。
じゃあ何故生きている?急に強くなったノーアイズに左目を抉り抜かれた事は覚えている。だが記憶はそこまでしかない……。
成る程、俺は今ノーアイズとなって生きている、という事は分かった。
だがそれだけでは他は何の理解も得られない。
他のノーアイズ達も俺と同様に意識があるのか?
レイは俺と同類だったのか?
そうしてその他の疑問が延々と幾重にも積み重なり、様々な思考が絡み合っていくと、結局ただ一つの疑問が胸の懐に大きく塞がる事となった。
ノーアイズとは一体何?