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第六章「瞑想」 22
地獄を見た。
目の前で数えきれないほどの数のノーアイズが群を成し、狂った叫び声を喚き散らしながら、雪崩のように突っ込んでくる。ノーアイズが白濁色の壁となって押し寄せる。しかも尋常ではないスピードでだ。弾一発で何が出来るか。何も出来ない。いや、出来る。
自殺だ。今すぐこめかみでも喉元でも何でも撃ってしまえば一瞬の苦痛だけで事にけりがつく。
しかし、ジョンはそれを潔しとはしなかった。まず、彼はレジスタンスの隊長として死にたかった。自分の指揮で敵味方双方の肉塊の山を築き上げ、自分だけ自殺で簡単に死のうとは彼は毛頭思わなかった。
そして、隣にはジャニスがいる。絶望に泣き喚きながらショットガンの弾薬を一発、また一発と装填している。彼女を何としてでも生かしてやりたかった。
何故か。彼、ジョン・ターウィルガーは彼女、ジャニス・ターウィルガーを心の底から愛しているからだ。
突如、ジョンの脳裏で死の走馬燈が乱暴に繰り広げられた。