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第六章「瞑想」 9
「出てこいよ、レイ!!」ボブは宝石店の前に立つと、叫んだ。もちろん返事はない。しかし、物音一つもしない。
死んだのか…?いや、息を潜めているのだろう。散弾が当たったにしろ、少し距離が遠すぎた。
グリップを握り締め、深呼吸をし、ガラスの割れた所から店内へ侵入した。
強烈な闇が店内を支配していた。ショーケースのダイアモンドのネックレス光り輝くことなく闇に呑まれてしまっている。ボブの視界はショットガンのサーチライトの小さい光の円のみ。
耳を澄ましても、外にいるジョン達の銃声が微かに響いてくるだけだ。
どこだ?本当にどこから現れるか分からない。いつ襲ってくるか知れない。
ハハ、プレデターかよ。光学テクノロジーで姿眩まされてるんじゃないか?
足を一歩踏み出すと、ピチャリと液の音がした。見ると、床に重油のように真っ黒な血溜まりが出来ており、何か引きずったような跡が店の奥に続いていた。