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第六章「瞑想」 5
だが、引き金を引いたのより、レイの手が届く方が先だった。弾丸はあさっての方向に飛んでいき、レイの手はがっしりとジョンの頭を掴み、引き倒した。
「がっ…!!」ジョンの後頭部は地面の硬いアスファルトに酷く打ちつけられた。視界に一瞬大きな火花が散った。そして次の瞬間にはレイが仰向けになったジョンの腹の上に跨り乗っていた。馬乗りだ。
酷い臭いの唾液がジョンの顔に降り懸かる。吐き気がこみ上げたが、堪えた。紫色をしたレイの長い舌が不規則に揺れている。
だがジョンには今、抗う術はなかった。いくら振り解こうとしてもがいてもレイの体はびくともせず、手に持っていたコルトパイソンも先程の衝撃で2メートル先まで弾き飛ばされていた。
何も出来ない。動けない。
万事休す。
ジョンの目の前で大量の唾液を引きながらレイは大きく口を開けた。口内は鋭利な腐った牙で一面覆い尽くされ、その森の奥では奈落の様な闇が渦巻いていた。
そしてその牙はジョンの目を抉り取ろうとしていたーー