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第六章「瞑想」 4
それは地に降り立つと、ブルを越える風の如きスピードでこちらに向けて突っ込んできた。
闇の中から突然現れたそれの正体は、
レイ・ハウエルだった。
遙か遠くで一つ踏み込むと、すぐさまひとっ飛びでジョンの眼前にまで迫ってきた。
「…!!」ジョンがとっさに屈むと、レイの体は彼の背中を越え、そのままの勢いで通り過ぎた。直後、レイは空中で半回転して、着地点のバンの車体に張り付いた。
最早その怪物にはレイ・ハウエルという人間だった頃の面影はほとんどない。灰がかった白濁色の粘着質の肌、口からはみ出す長い紫の舌、漆黒の液体を絶えず抽出する壊れた涙腺…。レイはすっかり「ノーアイズ」という怪物に成り果ててしまっていた。
レイは野太い奇声を上げてそこらに唾液を撒き散らすと、再びジョンに飛びかかっていった。
上体を起こしたジョンはそれに反応し、飛びかかってきたレイ目がけてコルトパイソンを撃った。