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第六章「瞑想」 1
12月27日。午前2時17分。
ニューヨーク。
寂れ廃れた街の中でジョン、ボブ、ジャニスの3人は歩いていた。離別したミシェル達との合流が叶わぬまま進んでいた。夜の暗闇の中、遙か向こうに霞んで見えるコア・ビルは自由の女神と並んで静かに佇んでいた。
タイムズスクエアの目映い光は死に絶え、都会の喧噪も無い。ここは最早ただの廃都だ。並んでそびえ立つビル群もすっかり色を失い、ただの空虚なオブジェと化している。
地面のアスファルトを踏みしめる度に足の内部から激痛が走る。もうどれくらい歩いたのだろうか。さんざん反復運動を繰り返してきた足が悲鳴を上げている。そこら中に無造作に捨て散らかした車の群が恨めしい。
暗闇の奥底から呻き声が聞こえた。これまで何百、何千、何万回と聞いてきたノーアイズの声だ。しかし、それは急激に大きくなっていく、近づいて来る。
そしてあっと言う間にそのノーアイズは闇を斬り裂いて現れた。