103/186
第五章「地獄」 8
今度は包丁の切っ先で骨を削り始めた。骨の繊維が飛び散る度にロバートは悲鳴を上げる。鮮血が床に血溜まりを作る。
「マックス!!」ミシェルは叫んだ。
「何?!」
「包帯をもっとキツく!!」血の量が半端ではない。このまま行くと失血死してしまう。
「え…あ…わ…わかった…!!」マックスが瞼を開けると、血みどろの凄惨な光景が目に飛び込んできた。ざっくりと割れた傷口から溢れ出す鮮血。その傷口に包丁の切っ先を狂ったように打ちつけまくるミシェル。
一瞬言葉を失いかけた。しかし彼は堪え、ロバートの腕に近づいた。
マックスは上腕の包帯のパイプに絡ませた結び目を解いた。緩む方に傾くパイプを舵の様に逆に回していく。ギチ…ギチ…と捻れた所から窮屈な音が出るが、構わず回し続ける。ミシェルと同じく全体重をかけて。
下腕の方を見る。かなり血の勢いが収まった様だ。
良かった。
だが、安堵したのも束の間。マックスはある音が聞こえない事に気付いた。