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第五章「地獄」 7
「ああああああぁぁああああああああ!!!!」ロバートが痛みに絶叫した。
包丁の刃は皮膚を千切り、筋肉を切り裂いた。が、そこで止まってしまった。
骨だ。堅牢な骨が腕の切断を拒む。
「まだか畜生!!!解体ショーはまだ済んでねぇのかぁぁあぁ?!!!」
引きつった表情を顔に張り付けたミシェルには全く聞こえていない。ロバートが飛ばした唾がミシェルの頭部に降りかかる。
先程上腕を縛って血流はある程度止めたが、結構な量の鮮血が傷跡から湧き出ていた。
本当は早く済ましたかった。本当は一気に一刀両断してしまいたかった。だが、叶わなかった。
地獄はまだ続く。
ミシェルは再度包丁に全体重をかけた。刃先が骨にほんの少しだけ食い込んだのが手の感覚で分かった。湧き出る血液で視覚ではもはや分からない。聞くに堪えない悲鳴が耳元でつんざく。
もう一度全力を込めて押す。今度は刃先が骨から滑って代わりに脇の肉を切り裂いた。
「あああぁあぁああ!!!ポン刀は無ぇのか!?畜生ォォォァァァア!!!!」