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第五章「地獄」 5
「…では始めますか…」重々しく呟いてミシェルはマイケルから包帯と鉄のパイプ(マイケルの護身用アイテム)を受け取ると、右の上腕をその包帯できつく巻き始めた。
ある程度巻くと、結び、その結び目にパイプを差し込み、それを回し始めた。
「痛ぇ…痛ぇ…」ロバートが痛みに喘ぐ。目元がひきつる。
限界まで巻くとロバートの下腕はだらんとぶら下がり、そこでもう一回包帯で棒を巻き込みながら結んだ。止血だ。
「目を瞑って下さい、ロバート…」
「ああ、もうやってる。今俺の瞼はハマグリさ。」
ミシェルはそれを聞くとマックスから手渡された包丁を手に取った。
ミシェルの掌はすっかり手汗で湿っていた。心臓の高鳴りがどうしても抑えられない。
今から仲間の腕を切ろうとしているのだから。
下腕…間接から4センチほど下…に包丁を軽く当てる。赤い筋がツツ…と流れ出た。震える腕。ミシェルもロバートも双方腕が震えていた。
後ろのマックスとマイケルはただ目を瞑り、耳も塞ぎ、何も見まい、何も聞かまいと、脳裏で何度も何度も繰り返し念じている。