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序章10
クリスマスで賑わうはずの住宅街には人っ子一人見つからず、この上なく閑散としている。凍てつく風が吹きすさぶ。
お洒落に飾られるはずの街灯は真っ二つに折られ、電灯の破片が冷たいコンクリートの上に散らばっている。ほのかな光に包まれる筈の家々の中は廃屋と呼ぶにふさわしい程の悲惨な散らかりようになっている。明るく染まるはずの空は闇に閉ざされ、下弦の月がその中で孤独に佇んでいた。何も聞こえない静寂の中で唯一自分達の足音だけが響いている。道路では人々に乗り捨てられた車が群を成し、遠い虚空を見つめていた。
荒れ果てた街の闇の中を一歩ずつ、車の群を縫いながら進んでいく。
その途中、珍しく人間がいた。
腐乱死体になっていたが。