別離の盃
酒を勧む、きんくつし、の二次創作フィクションです。これっぽっちも史実はありません。妄想創作です。漢詩の知識は御座いません凹
俊才の友が
なみなみと酒を注ぐ
その盃は
かつては我等の詩の情を
歓ぶものとして交わされた
戻らぬ涙も
零れ落つ恥辱もあるに
当に 此れは ふくすい
腹から出た血は賤しき祖を持ち
愚かな瑣末事にも照らし出される
***
俊才たる友は
華の中にあった
雨風が多くとも彼は館の屋根の下に咲む
人々が囲いを造る真中を歩む
常に貴い富む花の王
余りに優れて魅せぬよう
貧しき衣を敢えて借り
肌に合わせて折れもせず往く
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『 雅号を私にくれはしまいか 』
その返答の満ちた盃
取っ手に曲げた指に屈む背
黄金ではある
この酒の底
うけねば礼も名も落ち果てる
開かぬ花や発てぬ風
触れ得ぬ濁流
この清酒
君知りたるや
持たぬ劣意を
嗤ひ閉じたるその口元は
許した友に干さるる逆月
つげども酌まれぬ
劣る朋輩
君去りし後の乱れよう
我も見兼ねて後を追う
ついて嘆けば金の酒
月に雲かけ世を冷やし
隠れた花は喪わず
再び宮へと戻りもせずに
ただ朋輩に酒すすむ
律に嵌めては
流麗に
即座に詩などに
纏め謂ふ
この詞こそ解離こそ
我等へだてる旧情として
――告げられたる詩は我等の別離――
「君に酒をつごう、さぁ、この金の盃の取っ手を持って。遠慮などそれこそ我等の間には拙い笑いものというものさ、恥を互いに掛け合わずいよう」
「……いま一度、政務に戻ってくれないか」
「――それを言いに来たのか」
「……では、私の詩に名前をくれはしまいか……あるいは詩作の時の私の雅号を決めてはくれないか」
「人の生は別離に足る、君と交わしたあの楽しい詩の情の日々も――もう昔なのだね」
「……ここまで来た友に別離を吟ずるのか」
「詩であるならば。さあ、飲んでくれ。これがもう二度とはない我等の酔いの最後かもしれない」
「……それはお前が持つものだから言えるのだ、官位に拘り、無い詩情を捻り出し、熟された風を必死に演じる俺の気持ちなぞ……! お前には遂に解らなかったのだな!!」
「――友よ」
「呼ぶな、呼ぶな、呼ぶな、お前と同じ時代に生まれた自分が疎わしくて堪らない! 誰も、いないのだ! 望んで咲き誇る百花の王の隣に立つものはない!! 劣っているのを、せめて判らなければ俺も士合わせだった!!! お前を誹る愚か者に煮え湯を呑まされる悔しさほどの苦しみはない、全てを悟りさっさと去って、お前は世を厭い彷徨ってみせたな! けれども、それでも何も覆らない。見てみろ、こんなにも俺たちには差があるまんまじゃないか! 身を置く場所が本質では無かったのだ、優劣は残酷なまでに明らかだ……!! なぁ、俺にはお前と分かたれて……それでも身を立てられる程の胆力などは無かったのだ……」
「――ともよ、さけを、金の盃に――」
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「我ひとり煽る月の下
金の杯に欠ける月星
取るべき手も無く
独り花みる
捧ぐべき詩もなく
別けるべき人も亡く
百の王に劣る卑しさ
我虫の這う傷深き菓子
入るべき盃を失い
零れ落ちる酒の雫
友でなく人でなく
我は傷む芯なき果実
貴き詩情は去り
手に温むは枷の冷たさ
金に見えし昔には夢……」
「まただ、あの囚人」
「チィッ! うるさいぞ! 黙れ!!」
「……しぃっ! よせ、わからないのか、あいつは死罪になったろう……!!」
「あ」
「……そうか」
「また忘れていたな?! 見に行ってみろ、幽鬼に捕まるぞ!」
「……そ、そうだった」
「あれは聴いてはならない詩だ」
「聴こえてはいけない死人の詩なんだ」
果たして。真実から。
……私はおまえの友だったろうか……
劣等感に苛まれた作者よりお送りしました。
虎さんの事が懐かしい。山月記。




