第1章 8話 調停者の呪い
塔の屋上。
俺は息を吐いて、空を見上げた。
「残響でも神級魔法を使ってるとなると、本物のエターナルの力の底が見えねえな……」
リリアが隣に座って、膝を抱えた。
「私も調停者として、何度も異世界人とともに戦っては来ているのだけど……今までに一度しか本体に辿り着けてないの。
でもやっぱり本体は使徒とは比べ物にならない程の怪物ね。
結局その時の異世界人ごと……世界を消されてしまったわ」
俺は眉を寄せた。
(……世界?)
「世界が消されたってどう言うことだよ! まだこの世界は存在してるじゃねえか」
リリアはゆっくり息を吸って、話し始めた。
「今から話す事を聞いてくれれば理解できると思うよ。
この世界ができたばかりの頃、神エターナルはこの世界に様々な種族を生み出した。
人間、獣人、エルフ、ドワーフ、竜人、魔族……全部で六つ。
そして力や知能を与えた。
私達はそんな各種族が世界を滅ぼさないように、調停者という役割で生み出された。
だがその後、ある種族──竜人が見張り役の調停者を殺して、神エターナルに刃を向けた。
当然その種族もろとも消された。
だがその瞬間、均衡は崩れた。
そこから世界が滅ぶのは一瞬だった。
竜人が支配していた地域を巡って争いが絶えなくなり、最後には世界全域で戦いが起きて、世界は崩れかけていた。
それを見たエターナルが『こんな世界滅んでしまえばいい』と言った瞬間……世界が消えた。
そこに見えたのは『無』だった。
だがそこに光がさした。
そして私の耳元で囁いた。
『この世界を正しい方向に導いて』
それは自分の同僚である調停者達だった。
何を言われたかわからないがそこからは時間がないからと淡々と説明された。
まずこの空間だが、世界が消えた余波による隙間だった。
そしてそれはすぐ消えてしまうと言う事。
ここに入れなかったものはすぐに消えてしまったらしい。
どの道ここから生き延びる事など不可能なんだが。
次に秘術と呪いを受けた。
その秘術が今私が使用している『異世界人召喚』だ。
そして自分が受けた呪いが、世界が崩壊する度に自分が生まれた時間に戻ると言うものだった。
しかし次に生まれる時は他の調停者は生まれず、自分だけ。
どうにかして争いを止めて、世界の崩壊を阻止してとのことだった。
だから私は何度も阻止するために動こうとするが失敗してしまった。
何故だと思ったが、その理由も直接対面することで理解した。
神エターナルは元々、世界の破滅を望んでいた。
だが直接手を下してはすぐに終わってしまうから、それをしなかった。
だから争いを引き起こしても止めずに続行させていたんだ。
そして世界が壊れるギリギリまで戦われてもう続行不可と思ったら滅ぼす。
それがしたいから世界を創っているということだった。
『あいつは自分の破壊衝動に駆られて動いているカスだ。
口では争いのせいとか言っているけど、そんなもの口実に過ぎないのさ。』
そして使徒なんだけど、あいつらはエターナルの因子を取り込んでいるから操り人形みたいなものさ。
でも思考まで操っている訳ではないから、紛れもなくあいつら自身の意思で敵対しているんだよね。
そして厄介な事にあいつらは神級魔法を余裕で使いこなしてくる。
それが本当に厄介。
そもそも神級魔法とは神の名がつく通り、元々エターナルしか使えない魔法なのだとか。
でもエターナル因子を取り込んだり、または俺みたいに異世界からやってきた人なら使えるらしい」
……。
俺は拳を握りしめた。
「つまり……使徒は本気で俺を消したい。
そしてエターナルは、破壊を楽しんでるってことか」
リリアは頷いた。
「そう。
だから……次に会ったら、絶対に倒す」
──その瞬間。
塔の下から、地鳴りがした。
黒い霧が噴き上がり、使徒が現れた。
今度は三体。
黄金の目が、俺を睨む。
「異世界人……芽を摘む時だ」
俺は短剣を抜いた。
「来い」
使徒が同時に突進。
神級魔法──デストロイ・ディヴァイン・ブレイズ!
俺は無属性魔素を全開に。
完全コピー。
無詠唱。
イグニス・フレア・アビス・ソブリン・ドミヌス!
炎がぶつかり、爆発。
だが今度は、俺の炎が上回った。
使徒の体が焼き裂け、霧が散る。
三体とも、霧となって消えた。
……倒した。
リリアが息を飲んだ。
「……初めて、使徒を完全に倒した」
俺は短剣を収め、言った。
「次はエターナルだ」




