第2章 第2話 祭り前夜
──祭り前夜。
戦いが終わって1ヶ月程経ったある日
学都エレンディアの空は、茜色に焼けていた。
宿屋の窓から見える街灯が、次々と灯る。
明日は「魔素の恵み祭」──
魔素枯渇の今だからこそ、みんなで祝うってやつだ。
俺は部屋の鏡の前で、
制服みたいなチュニックを脱いで、
「仮装……何にしよう」
と独り言。
……って、
そもそも服が少ない。
短剣と、
リリアがくれた革のベストだけ。
ため息。
その時──
ノック。
「ユウマ、いる?」
リリアの声。
「あ、うん」
ドアを開けると、
リリアが、
……猫耳つけて立ってた。
「……え?」
「どう? ミアから借りたの」
耳が、ピコピコ動く。
……本物みたい。
「似合う?」
俺は、
喉が鳴った。
「……うん。 似合う」
リリアの頰が、
少し赤い。
「じゃあ、ユウマも猫耳つけてみる?」
「俺はいい」
「えー、みんなで揃えたら可愛いのに」
その時、
廊下から──
「リリアー! それ、私の!」
ミアが、
尻尾をブンブン振って突入。
「ユウマにも貸してあげるわ」
「……俺はいいって」
セイルが、
後ろから入ってきて、
「統計上、猫耳装着時の魔素反応は上昇する。
データ取らせてくれ」
「データって……」
ミアが俺の頭に、
ふわふわの猫耳を乗せる。
「……似合わない?」
鏡を見たら、
……確かに、
ちょっと可愛い。
リリアが、
ふっと笑う。
「ユウマ、似合ってる」
俺は、
耳を触って、
「……ま、いいか」
ミアが、
「じゃあ、明日はみんなで猫耳組でいくわよ!」
セイルが、
「俺は……うさぎで」
「……お前、うさぎ?」
「データ上、うさぎ耳は防御力アップ」
……なんだよそれ。
その夜、
俺たちは部屋で仮装の打ち合わせ。
ミアが、
「リリアは白猫、ユウマは黒猫、私も猫、セイルは……うさぎで」
リリアが、
「じゃあ、みんなで屋台回って、
焼きそばと、りんご飴食べて、
夜の花火見よう」
俺は、
「……うん」
ミアが、
「ユウマ、猫耳のまま寝る?」
「は? いや、寝る前に外す」
「ふーん」
リリアが、
「ユウマ、明日は……隣歩いてくれる?」
俺は、
「……あ、ああ」
セイルが、
「心拍数上昇。 データ取った」
……うるせえ。
でも、
明日の夜、
みんなで笑ってる姿──
想像したら、
胸が熱くなった。




