第1章 9話 甘い休戦
使徒を倒した翌朝。
学都の宿屋はいつもより明るい。
窓から差し込む陽射しが、埃の舞う空気を金色に染める。
俺はベッドから起き上がって、腕の火傷を確かめた。
もう痛くない。
セイルの薬が効いたらしい。
廊下から、ガチャガチャ音。
リリアが朝食のトレイを抱えて入ってきた。
「ユウマ、起きた? みんな待ってる」
彼女の髪に朝露が光ってる。
……なんか、いつもより可愛い。
食堂。
セイルはすでにノート広げて、昨夜の戦闘データを分析中。
ミアは尻尾をパタパタさせて、パンにジャム塗ってる。
「ユウマ、遅いわよ。 冷める」
テーブルに座る。
スープの湯気が立つ。
俺はスプーンを握りながら、ぼそっと言った。
「……昨日、みんな無事でよかった」
ミアがニヤリ。
「ふふ、ユウマってほんとに真面目よね。
神級魔法ぶつけ合って『よかった』って」
セイルがメガネを光らせる。
「データ上、君のコピー精度は九割超えた。
次は完全相殺可能だ」
リリアがスープを一口飲んで、ふっと息を吐く。
「でも……エターナル本体は使徒の十倍は強いわ。
まだまだ足りない」
……沈黙。
でも、それは怖い沈黙じゃなかった。
「じゃあ、レベル上げだ」
俺が言った。
「近くの森に魔獣が暴れてるって聞いた。
みんなで練習しよう」
ミアが手を上げる。
「私は斥候ね。 尻尾で気配探るわ」
セイルがノートを閉じる。
「俺は支援魔法の新式テストする」
リリアが剣を腰に下げて、笑った。
「私は……ユウマの隣で剣を振るう」
俺は頷いた。
「決まりだ」
──森の入り口。
魔素暴走した熊型魔獣が五体。
体が黒く輝いてる。
「来るわよ」
ミアの矢が先制。
「セイル!」
「アクア・シールド・エクリプシス!」
水の壁が俺たちを守る。
俺は魔獣の炎ブレスをコピー。
無詠唱。
イグニス・フレア・ブレス!
炎が熊を包む。
リリアが剣を閃かせる。
「はっ!」
一撃で首を刎ねる。
セイルがメモを取りながら、
「ユウマ、魔素消費率が低い! 成長してる!」
ミアが俺の横に並んで、
「ねえ、ユウマ。 倒したら……夜、みんなで温泉行かない?」
「……え?」
俺が固まると、
リリアが頰を赤くして、
「ミア! そういうのは……」
セイルが真顔で、
「温泉は魔素回復に有効。 推奨」
……なんだよそれ。
最後の一匹。
俺は深呼吸。
無属性で、風と火を融合。
ヴェントゥス・イグニス・ストーム!
竜巻の炎が魔獣を飲み込み、消し飛ばす。
静かになった。
みんなで息を吐く。
ミアが俺の腕を軽く叩く。
「ほら、約束。 温泉」
……夜。
宿屋の露天風呂。
湯気が立つ。
俺は男湯で湯船に浸かりながら、
(……これが、レベル上げってやつか)
ふと思う。
隣の女湯から、ミアの声。
「ユウマー、ちゃんと湯加減いい?」
「……うるせえよ」
リリアの小声。
「ミア、からかうのやめなさい……」
……なんか、悪くない。
セイルが外から叫ぶ。
「データ取り終わった! みんなの魔素値、上がってる!」
俺は湯船で笑った。
まだ、まだ。
エターナルまでは遠いけど──
この仲間がいれば、行ける。
次の話から第2章始動




