54話 新作の魔道具 (2)
冒険者ギルドは年齢12歳から正式に登録する事が
可能となる。
ただし、貴族の子息となればもっと若い段階での
登録も可能となる。
2階で書類の埋もれるこの男。
冒険者ギルド長の男は、今日も書類に埋もれるよ
うに仕事をしていた。
コンコンッ。
と言う、音に顔をあげると面倒くさそうに声を上
げた。
「なんのようだ?」
「すいません。昨日来たハルカです。」
予想外の声に驚きドアを開けた。
そこにはまだ幼さを残した少年が立っていた。
昨日はいきなり訪ねてくると、メノウに使った
魔道具を見せて欲しいと言ってきた。
しばらくぶつぶつ言いながら眺めていると、そ
のまま帰っていった。
そして、今日眠そうな顔をしながら尋ねてきた
のだ。
理由は聞かなくてもわかる。
きっと昨日の続きだろう。
「また、魔道具が見たいのか?」
「いえ、見て貰いたいものが出来たんです」
一瞬、耳を疑った。
『見て貰いたいものが出来たんです』
出来た……だと?
「えーっと、ハルカくんだったね。君は、今D級
冒険者だね。C級の昇格試験を受けるか悩んで
いると聞いたが、合ってるかい?」
「はい。そうですね。ですが、僕は別に昇格しよ
うとは思ってないんです。ランクが上がればそ
の分指名依頼が増えるでしょう?自分の好きな
事ができないじゃないですか?」
ハルカの言い分は最もだった。
ただ、冒険者になって、ランクをあげようとは思
わない人物には初めて会った気がする。
「君は指名依頼は嫌いかい?」
「はい。嫌いです。貴族などの位の高い人が多い
ですから」
「なるほどな。それは最もだ。が、自分を守る為
にもランクを上げると言うのも必要な時がある
のを知っているかい?」
「……?」
ハルカは疑問に思うと小首を傾げる。
ギルド長は職員にお茶を頼むと、ハルカの前に椅子
に腰掛けたのだった。
「君は、オスタリア公国から来たね?メノウくんも
一緒だったそうだね?今、オスタリア公国では、
後継者争いで長男が毒殺未遂があったそうだね?
身内の犯行だと言われているらしい…」
「………」
「そして、犯人として指名手配されているメノウと
いう名前と、錬金塔の錬金術師……君の事じゃな
いかな?」
意味深な言い方に、ハルカは息を呑んだ。
多分、分かっていて言っているのだろう。
もし、ここで捕まって突き出されたら?
きっと、生きて出る事はかなわないだろう。
「それは脅しですか?」
「いや、そうじゃない。例えばだ。もし、A級冒険
者や、S級冒険者だったらどうだと思う?」
「……?」
意味が分からなかった。
指名手配にされた人間を助けられると言うのだろ
うか?
いくら考えても答えは浮かばない。
「分からないかい?冒険者というのは、国を度外視
して活動できるんだ。だから、あやふやな証拠の
ない犯罪に巻き込まれていても、簡単には拘束し
たり、裁いたりはできなくなるんだよ」
「!?」
「だからじゃないが、迷っているのならランクは
上げた方がいいと思うぞ?」
「……考えておきます」
「そうか、それはよかった。で?今日は魔道具の
事で話があったと?」
話を戻すと、ハルカは机の上に今朝できたばかりの
ものを置いたのだった。
見た目はいたってシンプルだったが、その分魔力が
多く必要となるのだった。
用途は、真実の水晶とさほど変わらない。
上位版と思って貰って構わないと言い切ったのだ。




