5話 アンバーの日常
アンバーはこの国の後継者になるにはまだ幼く、上
の兄二人には到底、力も魔力も及ばない。
魔力適性も7歳の時に風属性と判断されてからは魔
法の知識と訓練は欠かさず毎日行っている。
だが、まだ幼い事もあってか1日に数時間程度にお
さめ、それ以外の時間は自由に遊ぶ事が許されて
いた。
今日は一番上の兄の部屋の前まで来ていた。
コンコンッとノックをすると、中から何やら話声
が聞こえて来た。
ガチャっと開くと、中には兄のイーサと父と同じ
くらいのローブを着た男性が話していた。
アンバーが入ってくると話を止めるとイーサは部
屋の中へと招き入れてくれた。
「イーサ兄さま、僕と遊んでください」
「すまない、アンバー。今日はこの方と大事な話
があるんだ。少し、外で待っててくれるかい?」
「アンバーはイーサ兄さまと今すぐ遊びたいです」
「アンバー……」
呆れた顔をしながらも、イーサはアンバーには優
しかった。
「すまない、この大事な時に……」
「いや、構いませんよ。イーサ様。また明日にで
も来ますよ」
男は机の上に乱雑に置かれて居た書類をまとめる
と、部屋を出て行った。
残されたイーサはニッコリ笑うと、アンバーに手
招きした。
「おいで、どうやって遊ぼうか?」
「えーっと、かくれんぼしたいです」
「かくれんぼかぁ、なら庭に行こうか?」
「はい、イーサ兄さま!やっぱりイーサ兄さまが
一番大好きです」
そう言うと、アンバーはイーサに抱きつくと一緒
に庭へと行ったのだった。
庭に出ると、2階の窓からアンバー達を見下ろす
ようにメノウが窓の下を眺めて居た。
一瞬視線が合うと、アンバーはニッコリ笑って
手を振ってみる。
「イーサ兄さま、あそこにメノウ兄さまが居ます」
「あぁ、あいつは遊ばないよ。特に僕がいるからね」
「イーサ兄さまも、メノウ兄さまも、仲が悪いの
ですか?」
「いや……、だが……母が…違うせいかな……」
イーサは少し寂しそうに言うと、アンバーを抱き上
げたのだった。
「さぁ、遊ぼうか?」
「はいっ!イーサ兄さま」
最近は兄二人がピリピリしているせいで城の中でも
メイド達の空気が重い。
アンバーはどちらにも笑顔を向けると、手を振る事
を忘れない。
そんな誰にでも優しい子、をして居た。
最近、イーサの側にいる男が赤の錬金塔に籠ってい
た有名な錬金術師である事を知っている。
民の生活を豊かにする魔道具や、薬の開発を日々行
っており、さっきの書類はその開発段階のものだと
言う事も知っている。
それを知って、最近メノウも青の錬金塔へと毎日の
ように足を運んでいる事も。
だが、いつも帰ってくる時は泥だらけで、一人で
帰って来て居た。
「メノウ兄さまも諦めが悪い人だなぁ〜」
アンバーはいつも自分の部屋の窓から兄の帰りを
見下ろしていたのだった。




