48話 討伐依頼 (7)
森の中では日が暮れるのも早く感じた。
あまり遅いとギルドでの買い取りがしまってしまう。
ギルド自体は夜遅くまで職員がいるのだが、受け付
けや、換金は時間が決まっているのだ。
「そろそろ帰るか……」
そう思って立ち上がると、腰についた砂を払った。
取れた薬草の数は少ないが、引きちぎっていた時
と比べて、取ってから時間が経っているのに萎び
れてはいなかった。
「取り方だけでこんなに違うのかよ……最初から
教えろっつーのっ!」
一人で愚痴るとギルドへと戻ろうとして足を止め
たのだった。
どこかから人の声が聞こえる。
それは、荒い息づかいに混ざるように悲鳴に似た
声が混じっていたのだった。
普通なら、メノウは人助けなどするような性格で
はない。
面倒事は嫌いな性格だ。
だが、どういうわけか今日は一目散に声のする方
へと駆け出していたのだった。
お金がいつも以上にいっぱい手に入って機嫌がい
いというのもあるかもしれない。
ただ、薬草採取では体が鈍っているという理由も
あるかもしれない。
ハルカに褒められたいという気持ちがちょっぴり
あったかもしれない。
ハルカはメノウが誰か別の冒険者と組むことを、
断固反対した。
『貴方は絶対に前衛を巻き込む可能性が高いです
あの魔法を味方に使えばどうなるかわかってい
ますよね?ちょっとした怪我では済まないので
すよ?』
剣の腕だって、なかなかだって言ってもくれなか
った。
魔法は結構自信があったはずだった。
「俺だって強いんだっつーのっ!」
開けた場所に出ると、そこにはポイズンリザード
と冒険者が立ち向かっていた。
1匹のポイズンリザードは瀕死で、もう1匹はピン
ピンしていた。
「おい、大丈夫か?」
「誰だ?邪魔すんじゃねーぞ」
「おい、邪魔って……そいつ大丈夫なのか?」
「こいつは勝手にやられたんだ。知るかよっ、おい
囲んむぞ」
リーダーのような男が言うと魔術師と前衛の剣士が
突撃していく。
足元に転がっている男の側には短剣が2個転がって
いた。
顔と腹に毒を喰らったのだろう。
肌の色が変色し苦しそうに蹲っている。
助けを求めているのが彼だったのだろう。
だが、他のパーティーに口を出していい状況でも
ない。
討伐中に横から攻撃するのはマナー違反とされて
いて、冒険者の中ではこれほど悪質な行為はない
と言われる程だ。
だからメノウは見ているしかできなかった。
メノウが倒したがっていたポイズンリザードだっ
たが、結構強い事が見て取れた。
目の前の冒険者パーティーは決して弱いわけでは
なかった。
連携も取れているし、タゲを交互に惹きつける事
で特定の人間の消耗を避けている。
そして一番の大事なのは毒を吐くタイミングを持
たせない事だった。
ポイズンリザードが毒を吐く時は喉の分泌腺から
出す為に、一旦そこに集めて一気に放つ。
なので、喉を膨らませる予備動作に入る。
だが、左右から攻撃されると無防備に喉を膨らま
せている余裕がなくなるのだった。
硬い皮膚で覆われているせいで冒険者側も攻撃が
まともの通らず手数勝負なところがある。
炎で焼き切ればいいと思っていたメノウは、目の
前で炎が全く効かない現状を目の当たりにしたの
だった。
「おい、見てるだけならどっか行けよっ!」
「全く気が散るぜ」
「そうよ。まさか横取りする気じゃないでしょう
ね?」
神官ぽい姿の女性は嫌味っぽい言葉を吐き睨みつ
けてきた。
メノウはこれ以上ここにいるのは気まずいと思う
と帰って来たのだった。
ギルドで薬草を買い取ってもらうと宿に戻ったの
だった。
宿ではハルカが何やら魔道回路を描いていた。
前に見た事のある単純なもののように見える。
「また描いてるのか?もっと上級のも描けるだろ?」
「………」
メノウを無視すると黙々と作業に集中していたの
だった。




