39話 同盟と婚約 (5)
夕食時にイーサは花束を用意しておいて、サプラ
イズをするように、椅子に座ったロザリア嬢へと
渡したのだった。
「ロザリア嬢の前では美しいはずの花達が霞んで
しまうそうです」
「そんな……イーサ様ったら…」
頬を染め、照れる姿はピンクの子豚のようだった。
イーサは別に綺麗な女性が好きなわけではなかった。
政治的に使えて、ある程度の教養があって、それ
でいてでしゃばらず邪魔をしない女性であれば誰
でも構わなかった。
それがどこの令嬢であってもだ。
身分は高いにこした事はないが、べらべらと口の
軽い女は論外だった。
それを思うとこの子豚ちゃんはイーサの条件にあ
てはまっており実に優秀な駒になりそうだったの
だった。
「使者としていられるのはあと数日と聞きました
私はロザリア嬢と末長く一緒に居たいと思って
います」
「まぁ…イーサ様にそのように言ってもらえるな
んて……帰ったら父に相談いたしますわ」
「えぇ。私は今年中に再びいい知らせが聞ける
事を願っております」
ロザリア嬢の手の甲にキスをすると笑顔をむけ
たのだった。
ロザリア嬢が帰るまでは、何度かデートをした
り、部屋でお茶会をしたりと貴族令嬢を呼ぶ事
はせずに、二人っきりで過ごしたのだった。
ロザリア嬢にはこれで好印象を与えただろう。
国に帰った時に、彼女がイーサについて話すで
あろう事を想像すると、笑みが溢れる。
「これでファルマン公国は私の思うがままに手
を貸すだろう。大事な一人娘の嫁ぎ先となる
のだからな」
「ですが、ナニス王国が黙っていますかね?」
「黙ってはいないだろう。だが、今はメノウも
いないのだ。何も手を出せないだろう、今は
………な」
そう、今はまだ手を出さないだろう。
ナイス王国では、オスタリア公国はメノウが
後継だと信じているうちは…。
今はまだメノウが国を出奔した事も、指名手配
された事も知らせていない。
もし、それを知ればすぐにでも偵察隊ではなく
確実に侵攻してくるだろう。
それだけは避けなければならない。
せめて、ファルマン公国もロザリア嬢との婚姻
までは知られるわけにはいかないのだった。
その頃、ファルマン公国に戻ったロザリアは、
父の書斎へと駆け込んでいた。
「どうだった?イーサ君はロザの事を覚えてく
れていたかい?」
「はい!すっごく紳士的で、かっこ良くなって
いましたわ。それに私の事を…//////」
「あら?これは、プロポーズでもされたかな?」
「嫌だわ、お父様…でも、本当に素敵な人だっ
たわ。私の体型にも驚きもしないし、綺麗な
令嬢達にも見向きもしないんですもの」
「うんうん。そうか、ロザはイーサ君を気に入
ったようだね。では婚約期間も短い方がいい
かな?」
「まぁ。お父様ったら」
メンディウス・ファルス公爵は妻のローザを眺
目ながら娘の幸せそうな表情を本当に嬉しそう
に眺めていたのだった。
「それで、ロザ。メノウ君はいたかい?」
「あの失礼な人ですか?いえ、城の中ではお見
かけしていませんわ。そういえばお食事の時
にもいらしてませんでしたわ」
「なるほど、これはイーサ君で決まりといきそ
うだね」
何かを考えている様子だったが、ロザリアには
予想もつかない事だった。
今は、ただ。
そう、今はすぐにでもイーサにまた会いに行き
たいという想いが募るばかりだった。




