38話 同盟と婚約 (4)
表通りの賑やかな場所にはオシャレなケーキを出す店
がある。
それはメイド達にも評判で、城での食後にデザートと
して出されることもあるほどだった。
「さぁ、着きましたよ。ここは我が国でも有名な菓子
を出すと評判なお店なんです。是非ともロザリア嬢
と一緒に来たいと思っていました」
「そんな…私ったらこんな体型だし…」
「私はロザリア嬢が好きなのであって、体型など気に
しませんよ?」
平然と言ってのけるイーサにロザリアは差し出された
手を握りしめたのだった。
あまり他国の使者を連れ回すのは良くないのでと言う
理由をつけてケーキを食べたあとは城に戻って部屋で
休む事になった。
その間もイーサは使用人に花束を注文するように命じ
ておいたのだった。
夕食の時に、渡すように準備しておくらしい。
「花束ですか…」
「女は好きなのだろう?」
「そうですね。宝石と花とドレスを贈れば大概の女は
落ちると言われている三代寄贈の定番ですね」
「なんだ?その目は?」
「いえ、イーサ様も普通の男なのだなと思いまして…」
そう言うとタヒソは黙々と作業に取り掛かったのだ
った。
やることは山積みだった。
消えたメルバルト・ファオニンの捜索。
逃げ出したメノウの捜索。
一緒に逃げただろう有能な錬金術師の弟子の確保。
イーサ殺害未遂の犯人の捜索。
これには城の内部の人間の手引きがなければ成功し
なかっただろう事。
そして、毒を盛ったメイドの不可解な死。
あきらかに口封じとしか思えない殺害方法にここで
もまた毒が使われた事が判明しているのだった。
「これはまだ公表していないのですが…」
そう前置きをおいて、タヒソが懐から小さな小瓶を
出したのだった。
「これは?」
「師匠の机の中にあったものです。エリクサーまた
は万能薬と呼ばれる薬です」
「成功していたと言うのか……」
「おそらくは……ですが、世に出すつもりはなかっ
たのではないかと思うのです」
タヒソはおもむろに取り出すとイーサへと渡した。
「これはどんな病も立ち所に治す万能薬です。そし
て今回のイーサ様の毒にも…」
「………」
解毒が困難で時間稼ぎしかできなかったのだ。
そして悩んだ末に師匠の青の錬金術塔へと行ってこ
れを手に入れたのだ。
もし。これが見つからなかったらと思うとゾッとす
るのだった。
きっと今、イーサはいなかっただろう。
半分以上中身が残っているエリクサーを手放すのは
今のイーサ達には恐ろしいことでもあったからだ。
「なるほどな…」
「ですから、これは我らだけの秘密にすべきなの
です」
「分かった。だが、もし何かあった時は躊躇せず使
うぞ」
「心得ております」
タヒソはその手に持った小瓶をイーサへと献上した
のだった。




