36話 同盟と婚約 (2)
タヒソの話を聞く限りでは、ファオニンが変わった
のはここ一年という事だろう。
そうなると、どこへ行ったのかとなる。
国を出たのか?
それとも身を隠さなければならない何かがあったの
だろうか?
どちらにしろ、今はイーサの暗殺を食い止める必要
があるのだった。
タヒソも考えた事だったが、イーサ暗殺事件の首謀
者はメノウだと言われている。
だが、果たしてそうだろうか?
イーサも薄々は気づいていた。
メノウがそんな大それた事を考える人間ではないと
言う事に。
もし、メノウだったのなら、直接剣を持って現れる
だろう。
それほどまでに愚直で真っ直ぐで、そして馬鹿なの
だった。
となれば、犯人はまだ城の中に潜んでいるという事
になる。
今後も、同じような事が起きるという事を覚悟せね
ばならなかったのだった。
「まぁ、今はこれでいい。」
「はい、ロザリア様はどういたしますか?」
「それは大丈夫だろう。殺したいのは私だけだろう
からな」
「それは……次は決してこのような事には……」
「もういい。この魔道具があれば毒は防げる。それ
だけで、十分だ。あとは、ナニス王国の動きに注
意せねばなるまい」
そっちでも、魔道具が必要となるのだった。
前に冒険者用とファオニンが作った結界を作る魔道
具は実に出来が良かった。
剣も魔法も通さず、強固な壁を作ったのだった。
これも予算と、実用性には不向きとして却下され宝
物庫行きとなった。
実際は、あまりに性能が良過ぎて敵の手に渡ると困
るという理由だった。
「本当に、あの人は規格外な事ばかり考え付く人だ
ったな」
「確かに、誰も話についていけませんでしたから…」
もし、あの人の話相手が出来る者がいたとしたら。
それはきっと、よほどの知識が豊富で偏屈ジジイが
頭を抱えるほどの天才でしか無理だろうと誰もが思
うほどだった。
「そういえば、あの人と一緒に暮らしていたと言う
青年の身元はわかったのか?」
「いえ、見たことのない髪色をしていたとしか…」
「見た事のない色?」
「えぇ、前にチラッと見た時に、師匠の横で真っ黒
な髪をしていたのを見かけていて…」
イーサは少し考えると、ポツリと言葉を漏らした。
「異世界からの落ち人か………」
異世界とは、こことは異なる世界を言う。
昔に数度、異世界から人が落ちてきた事があった
そうで文献にも残されていた。
その時の人の影響で色々な物が飛躍的に発展を遂
げたのだった。
もし、そうだとしたなら。
どうして国に報告しなかったのか?
最高の錬金術師ともあろうあの人が、報告をしな
い理由などないはずだと考えてからふと、手を止
めた。
「明日、司書室へいくとしよう…」
「お供いたしましょう」
「いや、いい。警護の騎士を連れていく。タヒソは
研究を進めてくれ」
「はい」
イーサは明日のロザリア嬢とのデートコースを考え
ながら眠りについたのだった。




