33話 オークションの警備 (3)
断るに断れない状況とはこういう事を言うのだろう。
食事の場には、レステルの父親も来ていたからだ。
確か、レステルの父親はこの国の副総監であるとギ
ルドで話を聞かされた気がする。
たかだか冒険者一人にどれだけ気を使わせるつもり
なのだろう。
「あの……その方は…」
「こちらは私の父だ。」
「今日は、ちょうど娘のレステルと食事の約束をし
ていてね。そこに誘いたい人がいると言われて、
少なからす悩んだものだよ…はははっ」
「いえ、悩まずとも、断ってくれていいのですが」
あきらかに、身分が高い事が伺える衣服に装飾品が
チラリと見える。
「今日はレステルが世話になったそうだね?」
「そうなのです。もしハルカがいなければ我が会場
で奴隷売買が行われる事になっていたのです」
「それは重大な事だ……だが、彼が手引きした訳で
はないと言う証拠はあるのか?」
レステルの父の言葉に、一番驚いているのはレス
テル本人だった。
商売柄、人を疑うように躾けられていたレステル
だったが、ハルカの事はすぐに信用したからだ。
その事を疑っているのだろう。
「疑うなら僕は席を外した方がいいですか?」
「いや、そんな事はない。私の目が信じられないの
ですか?」
「いや。まさか曇ってはいないか?と思って言った
までだよ。まずは疑ってかかれ、その心が大事だ
からな」
一応レステルさんの目利きは信じているらしい。
それにしても、豪華すぎる料理に貸し切り状態の
レストラン。
あまりに場違いすぎる気がしたのだった。
「そうだ、気になっていたんだ。あの魔道具を見
せてもらえないだろうか?」
「あぁ、それでしたら…」
そう言って首から下げていた小さなコインの付い
たネックレスを机の上に置いた。
なんの変哲もないただの装飾品に見える。
「これで、あの男の従者が持っていた荷物の中身
が人間であると見抜いたのかい?」
「はい、つけてみればわかります。少しの魔力で
発動するので」
そう言われてレステルが手を伸ばす。
首にかけて魔力を通すと、周りをぐるりと見回した
のだった。
「これは……すごい……」
「どう見えるんだ?」
気になっていたのだろう。
父親も食い入るように聞いていた。
親子共々好奇心が勝ったのだろう。
レステルから手渡されると、実際につけて体験した。
これは、結構な自信作だった。
少量の魔力で周りにあるものの説明が見えるのだか
ら……。
コレを身につけているだけで、店員が持ってきた料
理の名前や、材料が見ただけで理解できるようにな
るのだ。
そしてじっくり見れば店員のポケットの中身まで
見る事が可能だったからだ。
鞄を開けずとも中身が見えれば、これからの取引
きがスムーズに出来るだろう。
そう考えるレステルに対して父親の方は、国との
交渉に使えると考えていたのだった。
「これは素晴らしいな。どこで手に入れたか聞い
ても?」
「秘密です。ですが、メルバルト・ファオニンと
いう名前に聞き覚えはありますか?」
「それなら有名だからな…まさか彼が関わってい
るというのか……それならば納得がいく…」
師匠の名前はどこでも有名なのだと改めて知った
のだった。




