32話 オークションの警備 (2)
オークション会場には様々な人が出入りしていた。
身分を隠しているのだろうが、あきらかに身分が
高いだろう人や、みすぼらしい格好をしている人。
親の金で豪遊していそうな貴族のボンボン。
絶対に裏で何かやってそうな顔立ちの人など、多
くの人が出入りしていた。
時間になるまでは会場の出入りが自由となってお
り、出入り口はたった一つだった。
それがハルカが今いる場所なのだ。
ここを通過する以外に出口がない。
そう聞いている。
オークションでは買った物は別の場所で受け渡し
するので、ここを通る人は皆、身軽な軽装をして
いる事が多い。
だが、まれに大きな荷物を持つ者もいた。
「すいませんが、荷物を拝見してもいいですか?」
ハルカが目の前を通った紳士が連れている従者に
声をかけると、紳士的な男性は顔を一瞬歪めたの
だった。
「私の荷物に何か?」
「いえ、少し重そうだなと思いまして……こちら
で中身を確認してもよろしいでしょうか?」
「いや、いい。私の私物だ。確認の必要はない」
受付けの女性はハルカが引かないせいで、動揺し
始めた。
「ごめんなさい、少し上の者を呼んできて貰えま
すか?」
「は、はいっ!」
ハルカは呼びに行かせている間も、その男性と従
者を決して中へは入れなかった。
すると、ここの主人であるレステルが姿を見せた
のだった。
「君、何があったのか聞いてもいいかな?」
「はい、こちらの男性が入場時に連れている従者
なのですが、大きな荷物を持っておいででした
ので、代わりに持って差し上げようかと」
言い方は、普通だが、言いたい事はそこではない。
従者の荷物を強調したのだ。
それに気付いたのか、主人であるレステルはすぐ
にその客を別室へと案内するように指示を出した
のだった。
「お客様。こちら特等席にご案内しますので、し
ばしお茶などいかがですか?こちらの従業員の
不手際もございますし」
「あぁ、そうだな……全く不愉快だ」
そう言って、従者共々別室へと案内していく。
その間に、レステルはハルカに向き直ると、小声で
話しかけてきたのだった。
「あのお客様に何かあったの?少し荷物が大きい気
はするけど……」
「中身は人間が入っていると言ったら?怪しくない
ですか?」
「あの荷物の中身かい?」
「はい、間違いないかと。多分、この会場で売買す
るかもしれませんね。この国では奴隷の売買は違
法ですから」
「ふむ、それは困るね。店に迷惑な客ってわけだ。
それにしてもよくわかったね?」
「僕には魔道具がありますから…」
そう言って、首から下げたネックレス型の魔道具を
見せた。
初めから中身がわかっていたのだ。
だから、あえて時間をかけて足止めしてレステルを
呼んだのだ。
この後の指示を仰ぐために。
すぐに憲兵が来て彼らは連れて行かれた。
従者が持っていた荷物の中には小さな少女が押し込
まれていたという。
無事、今日のオークションが終了すると、完遂書に
サインをもらう。
あとはこれをギルドに出せばお金が貰える仕組みに
なっていた。
「ハルカくん。ちょっといいかな?」
帰り際に呼び止められると、レステルから食事を誘
われたのだった。
「私が奢ろう。それに君とはまだ話たい事があるん
だよ」
そういうと、強引に高級そうなレストランへと行く
事になってしまった。




