27話 アネスタ王国 (6)
商人ギルドへ来ると、奥から声がして出てきたのは
メガネをかけた少し偏屈そうな老人だった。
「すいませーん。こう言うものは買い取りしていま
すか?」
そう言ってハルカが出したのはただの回復ポーショ
ンだった。
「おい、これじゃ……」
「黙ってて…」
メノウが何か言いたげだったのを制すると、老人へ
と向き直った。
老人はじっとポーションを眺めると、難しそうな顔
をした。
「これをどこで手に入れたか聞きたいのだが?」
「それは秘密です。それも料金に含まれますから」
「そうか………なら……金貨50枚。いや、80枚でど
うだ?」
いきなりの高額にメノウは自分の耳を疑ったのだった。
「なんでそんなポーションが?」
「そっちのは何も知らんのか?」
「はい、言っていないので……」
「それが懸命だろう。さて、売る気はあるのかい?」
「いえ、貴方の目を確かめさせてもらったんです」
にっこりと微笑むハルカに老人はバツが悪そうな顔
をした。
「そうかい。まるでファオニンに会った気分だ。胸
糞悪い……」
「やっぱり師匠の知り合いでしたか。それは都合が
いいです」
メルバルト・ファオニンの名前が出た瞬間、メノウ
がやっと理解したとでも言うように口を開いた。
「なりほど、さっきのはあのジジイの作ったポーシ
ョンか!やけに高いと思ったぜ」
「違いますよ。そもそも、師匠より僕のが性能が高
いものを作れるって誰も知らないですからね」
さっきのポーションをしまうと、今度はボアを店の
中央に取り出したのだった。
「今日はこのボアの買取りをお願いしたいんです」
「これはまた………氷漬けとは……」
「毛皮も無傷で解体できますよ?それと、お肉も鮮
度がいいです」
ハルカの言う通りだった。
全部を一瞬で凍らせたのだから、肉に血の臭みが行
く事はない。
解凍しないで解体できれば、これ以上のいい肉はな
いし、毛皮にも傷はなく、血で汚れてもいない。
そのせいか匂いも臭みがついていないのだった。
「分かった、買い取ろう。そうだな〜、金貨で30
枚ってところか……」
「では、40枚でお願いします」
「それは無理だろ?ギルドでも35枚で買い取って
るんだ。うちでは30枚だ」
食い下がる老人にハルカは一言、言葉を付け加えた。
「では、さっきのポーションも売ります。なので
80枚と40枚で、金貨130枚でどうですか?」
「うっ…………分かった!それでいい。支払いは
今日半分で、明日解体後に半分でどうだ?」
「分かりました。それで大丈夫です」
しっかり念書を書くと、半分の金貨65枚を先に
もらったのだった。
「おい、さっきのポーションってなんなんだ?そ
んな価値があるのか?」
「そうですね。普通国に売るなら倍くらいにはな
るのですが。まぁ、商人ギルドではこんなもん
でしょうね」
言わなかったが、さっきのはエクリサーと呼ばれ
る万能薬を薄めたモノだった。
エリクサーができた時に師匠の机に隠した分と、
もう一本自分用に持っていたのだ。
それを小瓶に少量入れて薄める。
これでハイポーション並みにまで劣化させたもの
になったのだった。
だが、見る人が見れば、わかる。
なぜなら薄めた分を除けばエリクサーになるのだ
から。
だから、売る場所には制限を設けている。
国には絶対に売らない。
冒険者ギルドにも売らない。
信用のおける人間にだけ売る。
その値段は、最低でも金貨60枚以上で売る事。
この条件下なら、無限に広めようとは決して思わ
ないだろう。
師匠とした取り決めだった。
この先、ハルカの能力を知った国の上層部がハル
カの力を搾取しない為にと、全ては師匠が作った
ものだと言っておけと言ったのだった。
すごいのは師匠で、ハルカはどこにでもいる錬金
術師なのだと考えるようにと……。




